私人逮捕
最近、「私人逮捕系YouTuber」が逮捕されるニュースが報道されています。
私人逮捕とは、一般私人による現行犯人の逮捕行為のことをいいます。警備業務を行う上でもその内容をよく理解しておく必要があります。
私人逮捕は、犯人が現行犯人、準現行犯人であることが条件となりますが、明らかな犯罪で犯人が特定している場合であっても、現行犯でない限り私人が犯人を逮捕することはできません。
私人逮捕のもう一つ、軽い犯罪の場合で、30万円以下の罰金、拘留、科料の罪に当たる場合(過失傷害罪、侮辱罪)は、犯人の住所、氏名が明らかでなく、犯人が逃走するおそれがある場合は逮捕できますが、たとえ現行犯であっても、知人や、名前、住所が判明している場合私人逮捕はできなくなります。
日本国憲法
第33条
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
刑事訴訟法
第213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
第212条
現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする。
2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
第217条
三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。
◯ 現行犯逮捕についての概略的知識
- 警備員は、他の業務に比べて犯罪に接する機会が多い。
- 現行犯逮捕等に関する刑事訴訟法の規定を十分に理解し、不当に他人の権利を侵害することのないよう配慮すること。
⑴ 現行犯人
第212条
◯ 第1項について
*「現に罪を行い」とは
- 犯罪を現在実行しているという意味。
- 犯罪の実行行為に着手し、それを遂行しつつあり、いまだ終了に至らない場合である。
- 未遂について処罰規定のない罪については、未遂の段階では犯罪の実行行為中とは認められない。
*「罪」とは
- 特定の罪(窃盗、傷害等)を指す。
- 単なる「不審者」であり、何らかの罪を犯している疑いがあるだけでは不十分で、現行犯人とはいえない。
*「現に罪を行い終わった」とは
- 犯罪行為終了直後を指す。
- 直後の範囲は機械的に何時間と決めることはできず、具体的状況に応じて判断される。
*「現行犯人とする」
- 第1項に該当するものが「現行犯人」です。
◯ 第2項について
*「これを現行犯人とみなす」→ 「準現行犯人」と言う。
- 第1号 犯人として追いかけられている。
- 「追呼(ついこ)」とは、
- 犯罪終了直後から「泥棒〜〜!」「待て〜」などと追いかけられている。
- 犯人として追跡されている。
- 第2号 盗んだもの、犯罪に使用した凶器などを持っている。
- 第3号 身体や衣服に、犯罪の明らかな証拠となる痕跡がある。
- 第4号 尋ねかけられるやいなや、走って逃走する。
- 「誰何(すいか)」とは、
- 相手が何者かわからないときに、呼びとめて問いただすこと。
⑵ 現行犯逮捕
第213条
*「逮捕」とは
人の身体を直接に束縛して自由を拘束すること。
逮捕者が被逮捕者の身体に寄り添って看視し、いつでもその身体を捕捉できる態勢をとり、その逃走を防止する方法等によって自由を拘束する場合も逮捕したことになる。
逮捕に際しては、当然ある程度の実力行使が許されている。
実力行使には限界があり、犯人の挙動、具体的状況に応じ、社会通念上妥当な方法をとる。
⑶ 現行犯人を逮捕した場合の処置
第214条
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
- 現行犯人を逮捕する権限は、一般私人にも与えられている。
- 逮捕行為が許されているだけであり、取調べ、身体捜検、所持品検査等を行う権限は認められていない。
- 犯人を逮捕した場合は、直ちに警察官に引き渡さなければならない。
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