- 警察庁から、良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書(令和5年12月良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する有識者検討会)が発表されています。
- 今後、交通誘導警備業務、雑踏警備業務の実施現場にて、自転車に対する誘導方法に注意しなければならない事項が出るかもしれませんので注視して行きたいと思います。
【良好な自転車交通秩序の実現させるための方策に関する提言】
第2自転車の交通違反に対する効果的な違反処理の在り方
5、自転車の交通違反に対する違反処理の今後の方向性
〜違反者の行動改善に向けた指導取締りの推進〜
前記3及び4の意見を踏まえ、本有識者検討会においては、自転車の交通違反 に対する効果的な違反処理を可能とするため、自転車を交通反則通告制度の対象 とすることが望ましいとの結論に達した。自転車の交通違反を交通反則通告制度 によって処理するに当たっての基本的な考え方は以下のとおりである。
⑶ 交通反則通告制度と自転車運転者講習の関係
自転車の運転に関し一定の違反行為(危険行為)を一定期間内に反復して行った者(14歳以上の者に限る。)については、将来的に自転車の運転により交通の危険を生じさせるおそれが強いと認められることから、その危険性を改善するため、道路交通法第108条の3の5第2項の規定により自転車運転者講習の受講命令が課されることとされている。
危険行為:道路交通法施行令第41条の3第2項において、信号無視、通行禁止違反、歩行者用道路徐行違反、通行区分違反、路側帯進行方法違反、遮断踏切立入り、交差点安全進行義務違反等、交差点優先車妨害、環状交差点安全進行義務違反等、指定場所一時不停止等、歩道徐行等義務違反、制動装置不良自転車運転、酒酔い運転、安全運転義務違反及び妨害運転の15類型の違反が、危険行為として定められている。
一定期間内に反復して:運用上、3年以内に2回以上危険行為をした者を受講命令の対象としている。
自転車運転者講習には、交通ルール等に係る理解度チェックや違反行為の危険性の疑似体験等が盛り込まれており、受講者の行動特性に応じた教育内容とされている。
交通反則通告制度の適用対象を自転車まで拡大した場合を念頭に置いた議論の中では、自転車運転者講習をどのように運用するべきかという論点があるところ、自転車運転者講習の運用の在り方に関し、事務局から、
- 自転車運転者講習は、自転車の運転による将来的な交通の危険性を改善することを目的としており、取締りに代わるものではないことを踏まえれば、違反者の年齢や違反処理の方法の差異により運用を変えることとはしない。
- 具体的には、危険行為が反則行為の場合は交通反則通告制度により処理し、それ以外の違反行為の場合は刑事手続により処理することとなるが、違反者の年齢や違反処理の方法にかかわらず、危険行為を一定期間内に反復して行った者に対しては、従来どおり自転車運転者講習の受講命令を課すこととする。
という案が示され、本有識者検討会において議論を行ったところ、
- 交通反則通告制度の対象とされない16歳未満の者については、1回の違反でも非常に危険な行為をすれば受講命令をするという運用でもよいのではないか。
と、現在の自転車運転者講習の受講要件の在り方を見直すべきではないかとい う意見があった一方で、
- 自転車運転者講習については、法律上、危険行為を反復した者を対象としている点を変えることは難しいという前提の下、実態として14歳、15歳の違反者がどれだけの数いるかを見ていき、数が一定数いれば、違反回数や講習内容の点で特別に類型を設ける必要があると言えるだろう。
と、現在の自転車運転者講習の運用を前提としつつ、今後の違反者の違反実態を考慮しながら考えるべきであるという意見もあった。
このように、交通反則通告制度の対象を自転車まで拡大するに当たり、自転車運転者講習の受講要件も見直すべきか、という論点には様々な意見があったところ、当面の間は現在の自転車運転者講習の在り方に基づいて運用を行った上で、交通反則通告制度の適用後の状況を注視しつつ、必要に応じて講習の在 り方を見直すことが望ましいと考えられる。
⑷ 交通反則通告制度適用後の指導取締り方針
自転車を交通反則通告制度の対象とするに当たり、委員からは、
- 自転車運転者が交通ルールを守るのは当然であるが、自転車を交通反則通告制度の対象としていくに当たっては、気軽に乗ることができる乗り物とい 自転車のよさが失われ、結果として自転車に乗る人が少なくなってしまうのではないかという懸念がある。
といった意見があった。
これに関し、自転車の交通違反に対する指導取締り方針として、事務局から示された案の概要は次のとおりである。
- 自転車の交通違反に対する指導取締りは、これまでどおり、自転車関連事故の発生状況や地域住民の取締りに関する要望を踏まえ、PDCAサイクルに基づき、自転車関連事故の発生場所や時間帯、違反の種別、原因等を分析した上で、真に事故抑止に資する指導取締りを行う。
- 具体的には、自転車関連事故の発生が多い通勤通学時間帯や薄暮時間帯において、「自転車指導啓発重点地区・路線」(自転車関連事故が現に発生し、又は発生が懸念される地区・路線)等を中心に、交通事故の原因となるような悪質性・危険性・迷惑性が高い違反行為について、重点的な取締りを行う。
- 特に、自転車が交通反則通告制度の適用対象となった場合は、取締りの対象に反則行為とそれ以外の違反行為が混在することとなるが、このうち、反則行為となる信号無視、指定場所一時不停止、通行区分違反(右側通行、歩道通行等)等については、特に悪質かつ危険性の高い違反態様に限って青切符により取締りを行う。
- 取締りを行うべき具体的な局面としては、警察官の警告に従わずに違反行為を継続した場合や、違反行為により通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせた場合、交通事故に直結する危険な運転行為をした 場合等が挙げられる。
- 一方で、それ以外の場合は、自転車が国民にとって最も身近な移動手段の一つであり、検挙措置は真に必要なものに限って行われるべきという観点から、違反者に将来の運転行動の改善を促す指導警告により対応する。
- また、反則行為に該当せず、反社会性・危険性の高い違反行為である酒酔い運転等については、交通反則通告制度により定型的な違反処理を行うのではなく、引き続き、違反態様を問わず赤切符等により個別具体的な事情を加味して違反処理を行う。
本有識者検討会において、上記の案に関して議論を行ったところ、各委員から異論はなかった。
他方で、自転車を交通反則通告制度の対象とすることによって、警察がこれを恣意的に活用し、本来指導警告にとどめるべき違反行為を検挙するようになるという印象を国民に与え、現在、官民一体となって推進している自転車の利活用を阻害するようなことがあってはならない。
交通反則通告制度の活用も含 めた自転車に対する交通指導取締り活動は、これを通じて自転車事故のない安全安心な社会を創出することにより、我が国における自転車の活用推進に貢献するという文脈の中において行われるべきものである。
このような問題意識の下、本有識者検討会としては、自転車を交通反則通告制度の対象とする運用を開始するに当たり、
- 自転車を交通反則通告制度の対象とすることは違反者の行動改善に向けた取組の一つであり、「警察が自転車の利活用を阻害しようとしている」と 国民から疑念を抱かれるような恣意的な取締り活動を行うものではないことについて、国民に対して分かりやすく、かつ、丁寧に情報発信を行うこと。
- 実際に現場で取締りを行うに当たっては、取締り活動に対する透明性を高めるための取組の一環として、取締りの事前・事後における広報活動を積極的に行い、これらの活動が交通事故の抑止に資するものであることを国民に伝えることで、取締りを行う主体としての説明責任を果たすことを強く望む。
以上で述べた検挙の対象となる違反の行為態様と取締りの対象行為(罪種)の範囲を概念的に整理したものが参考資料7である。
自転車の交通違反に対する指導取締り方針(いつ、どこで、どのように指導取締りを行うのか、という点について整理したもの)は、参考資料8のとおりである。
◎ 出典
- 警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html)
- 「良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書」(警察庁)(https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf)を加工して作成。
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