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良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書10

  • 警察庁から、良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書(令和5年12月良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する有識者検討会)が発表されています。
  • 今後、交通誘導警備業務、雑踏警備業務の実施現場にて、自転車に対する誘導方法に注意しなければならない事項が出るかもしれませんので注視して行きたいと思います。

【良好な自転車交通秩序の実現させるための方策に関する提言】

第3 自転車の運転者による携帯電話使用等及び酒気帯び運転への対応

 本有識者検討会においては、自転車の安全な利用を促す政策について幅広く、総合的に検討するという観点から、自転車運転者による危険行為、具体的には携帯電話使用等及び酒気帯び運転への対応策についても検討を行った。

1、自転車の運転者による携帯電話使用等と酒気帯び運転の現状と問題点

⑴ 携帯電話使用等

 道路交通法上、自転車運転中に携帯電話等の無線通話装置を通話のために使用することや、スマートフォン等の画像表示用装置に表示された画像を注視することを禁止する規定が整備されておらず、道路交通法第71条第6号の委任を受け、都道府県ごとに、個別の公安委員会規則において禁止している(これに違反した者に対しては、5万円以下の罰金が科される。ところであるが、現状、都道府県ごとに禁止される行為の態様が異なっている。

 ◎ 携帯電話使用等に起因する自転車の交通事故件数が増加傾向にある。(図3)

  • 平成30年から令和4年までの累計事故件数は、平成25年から平成29年までの累計事故件数と比較して、約53.9%増加した。

 ◎ スマートフォン等の画像を注視等することによる交通事故件数 についても同様の傾向が見られる。(図4)

  • 令和4年の事故件数は平成25年の事故件数の約2.6倍となった。

 スマートフォン等のモバイル端末の普及が進む中、自転車運転中の携帯電話使用等に起因する交通事故を抑止するための方策について検討する必要があると考えられる。

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⑵ 酒気帯び運転

道路交通法上、酒気を帯びて車両を運転することは禁止されており(道路交通法第65条第1項)、自転車についても、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転する酒酔い運転や、身体に一定程度以上のアルコールを保有する状態で運転する酒気帯び運転は禁止されているところ、自転車の酒酔い運転をした者に対しては、自動車等と同様、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられることとなる一方で、自転車の酒気帯び運転をした者に対しては、罰則の対象外となっている

 ◎ 身体に一定程度以上のアルコールを保有する状態とは

  • 道路交通法施行令第44条の3において、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールとされている。

 ◎ 自転車の酒気帯び運転をした者に対しては、罰則の対象外

  • 酒気帯び運転の罰則については道路交通法第117条の2の2第1項第3号に規定されているが、 同号の罰則から軽車両が除かれている。

 こうした中、酒気帯び状態で自転車を運転した場合の交通事故における死亡・重傷事故率は、飲酒なしの場合の死亡・重傷事故率と比較して高い傾向にある。(図5)

  • 平成25年から令和4年において、酒気帯び状態で自転車を運転した場合の死亡・重傷事故率は、 飲酒なしの場合と比較し約1.9倍高くなっている。

 酒気帯び状態であった自転車の死亡・重傷事故件数の減少幅は、自転車の運転者が飲酒なしの場合の死亡・重傷事故件数の減少幅と比較して著しく低い状況である。(図6)

  • 平成15年から平成24年までの累計死亡・重傷事故件数と平成25年から令和4年までの累計死亡・重傷事故件数を比較したところ、飲酒なしの場合は約31.8%減少したのに対し、酒気帯び運転の場合は約9.5%の減少にとどまっている。

 こうした状況を踏まえると、罰則の対象とならない自転車の酒気帯び運転が死亡・重傷事故という悲惨な結果をもたらさないよう、その事故の発生を抑止するための方策について検討する必要があると考えられる。

2、有識者検討会での議論及び今後の方向性

 上記1の⑴及び⑵を踏まえ、事務局から、

  • 自転車運転中の携帯電話使用等について道路交通法上に禁止規定を設け、禁止する行為態様の全国的斉一性を確保するとともに、罰則を強化すること。
  • 自転車の酒気帯び運転について罰則を設けること。

 この2点について提案がなされたところ、これらの方針に対して、各委員から異論はなかった。

 したがって、自転車の携帯電話使用等及び酒気帯び運転に起因する事故を抑止するためには、上記2点に係る制度改正が必要と考えられる。
 なお、当該規定に係る罰則の内容については、自動車等で科されている罰則の内容も参考としつつ、感銘力のあるものとすべきである。

◎ 出典

  • 警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html)
  • 「良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書」(警察庁)(https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf)を加工して作成。

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