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良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書8

  • 警察庁から、良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書(令和5年12月良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する有識者検討会)が発表されています。
  • 今後、交通誘導警備業務、雑踏警備業務の実施現場にて、自転車に対する誘導方法に注意しなければならない事項が出るかもしれませんので注視して行きたいと思います。

【良好な自転車交通秩序の実現させるための方策に関する提言】

第2自転車の交通違反に対する効果的な違反処理の在り方

5、自転車の交通違反に対する違反処理の今後の方向性

〜違反者の行動改善に向けた指導取締りの推進〜

 前記3及び4の意見を踏まえ、本有識者検討会においては、自転車の交通違反 に対する効果的な違反処理を可能とするため、自転車を交通反則通告制度の対象 とすることが望ましいとの結論に達した。自転車の交通違反を交通反則通告制度 によって処理するに当たっての基本的な考え方は以下のとおりである。

⑴ 反則行為となる自転車の違反行為

 現行制度においては、自動車等による交通違反のうち、信号無視や指定場所一時不停止等の現認可能・明白・定型的な違反行為が反則行為(交通反則通告制度の対象となる違反行為とされている一 方で、酒酔い運転や妨害運転等については反社会性・危険性が高く、交通反則通告制度による簡易迅速な処理ではなく通常の刑事手続によって処理すべきという考えから、反則行為とはされていない。

 この点、交通反則通告制度の対象を自転車まで拡大した場合、どのような違反行為を反則行為とするかが問題となるところ、自動車等の反則行為の選定と同様の考え方に基づき、自転車による交通違反のうち現認可能・明白・定型的な違反行為を反則行為とし、反社会性・危険性が高く、簡易迅速な処理になじまない違反行為は反則行為とはしない案が事務局から示された(参考資料6)。

参考資料6(PDFへリンク)

 具体的には、信号無視や指定場所一時不停止等の自動車等について反則行為とされている違反行為のほか、自転車に固有の違反行為のうち、普通自転車の歩道徐行等義務違反等の現認可能・明白・定型的な違反行為についても反則行為とする一方で、酒酔い運転や妨害運転等の自動車等について反則行為とはされていない違反行為や、自転車に固有の違反行為のうち、自転車運転者講習受講命令違反等の簡易迅速な処理にはなじまない違反行為については反則行為とはしないというものである。

 また、警察では、後述のとおり、交通事故の抑止のため、信号無視や指定場所一時不停止等の交通事故の原因となるような悪質性・危険性・迷惑性が高い違反行為について重点的な取締りを行っているところ、反則行為をこれらの違反行為に限定するべきかという論点もある。この点、交通反則通告制度が自転 車にも適用されれば、通常の刑事手続によらず簡易迅速に違反処理を終結することができ、違反者・捜査機関双方の手続的な負担が軽減されるほか、反則金を納付すれば刑罰が科せられなくなることから、反則行為の対象を、刑事手続による刑罰の賦課を前提とした、現在の重点的な取締りの対象行為に限定すべき理由はないといえる。取締りの対象行為の限定については、飽くまでも運用上の措置として行われるべきものであることも踏まえ、本案においては、自動車等の場合と同様、取締りの重点や実績等にかかわらず、現認可能・明白・定型的な違反行為を一律に反則行為とすることとした。

 本有識者検討会において、上記の案に関する議論を行ったところ、委員から は特段の反対意見が出されなかった一方で、

  • 自転車の交通違反に対して交通反則通告制度を適用するに当たり、自動車等と同様の考えに基づき反則行為とそれ以外の違反行為を区分するというのは理解できるが、反則行為については反則金が支払われる一方で、反則行為の対象外となる、反則行為よりも重い違反行為が赤切符処理をされた場合、 これまでの検察の運用どおりであればそのほとんどが起訴猶予となり、何も制裁が科されないという一種の逆転現象が起こらないかという懸念がある。

 と、自転車に対する交通反則通告制度の適用に当たり、運用に関する懸念が示 された。

 自転車が交通反則通告制度の適用対象とされた後、反則行為とそれ以外の違反行為それぞれに対する処理の結果を注視していく必要があるが、上記の懸念を解消するためには、反則行為以外の真に悪質な違反行為を行った違反者に対して適切な制裁が科されるよう、警察においては必要な捜査を尽くすとともに、 検察においても個別具体の状況に応じた厳正かつ適切な判断が行われることを強く望む。

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⑵ 交通反則通告制度の対象となる自転車運転者の年齢

 現在交通反則通告制度の対象とされている自動車や原動機付自転車については、運転ることができる者の年齢が道路交通法において定められていることから、その運転者は一律に交通反則通告制度の対象とされているところ、年齢を問わず運転することができる自転車を交通反則通告制度の対象とするに当たっては、同制度の対象とする運転者の年齢が問題となる。

 この点について、事務局から示された案の概要は次のとおりである。

  • 交通反則通告制度の対象となる自転車運転者の年齢については、義務教育を修了し、基本的な自転車の交通ルールに関する最低限の知識を有しており、 交通反則通告制度による画一的な処理になじむといえる16歳以上の者(16歳以上の者は、交通反則通告制度の対象とされている特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード)を運転することができるほか、原動機付自転車免許や普通自動二輪車免許等を取得することができる。)を対象とする。
  • 16歳未満の者は、交通ルールに関する知識の程度や交通反則通告制度の効果への理解度等につき、個人差が大きいと考えられることを踏まえると、 交通反則通告制度による画一的な処理にはなじまず、特に14歳及び15歳の自転車利用者に関しては、その違反行為が警察官の警告に従わずに違反行為を継続するなどの悪質・危険なケースである場合には、赤切符等による取締りを行う。 本有識者検討会において、上記の案に関して議論を行ったところ、各委員から次のような意見があった。
  • 交通反則通告制度の対象となる自転車運転者の年齢に関して、16歳以上というところが適切だと思う。
  • 交通反則通告制度の対象とならない16歳未満の者に対しては、制裁に代わる教育的な措置として、「車両」として自転車が従うべき基本的な交通ルール等を身につけられるよう指導警告票を活用した効果的な指導警告を行うなど、指導警告を充実させることで対処いただきたい。加えて、刑事未成年となる14歳未満については自転車運転者講習の制度からも外れることとなるため、同様に指導警告の充実による教育的措置が必要と考える。
  • 16歳未満のこどもへの教育については、交通ルールに関する知識の程度に差があるからこそ、違反行為があった際に教育をすることが重要である。 今回の改正、見直しについては、5年後10年後のこどもたちの社会がより 安全で快適なものになることを目指すものであるため、検討を後回しにしてはいけないと考えている。 上記のとおり、本有識者検討会においては、交通反則通告制度の対象となる運転者の年齢については16歳以上とすることで一致した。また、16歳未満の自転車運転者に対しても、指導警告の実施や教育の充実により運転行動の改善を促すようにするべきである、という認識が委員間で共有された。
    • 指導警告の実施:14歳未満の自転車利用者に対しても、小中学生のうちから自転車の正しい交通ルールやマナーについての教育を促進する観点から、違反行為を認めた場合には積極的に指導を行うべきである。

 

◎ 出典

  • 警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html)
  • 「良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書」(警察庁)(https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf)を加工して作成。

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