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良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書5

  • 警察庁から、良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書(令和5年12月良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する有識者検討会)が発表されています。
  • 今後、交通誘導警備業務、雑踏警備業務の実施現場にて、自転車に対する誘導方法に注意しなければならない事項が出るかもしれませんので注視して行きたいと思います。

【良好な自転車交通秩序の実現させるための方策に関する提言】

第1自転車に関するより効果的な交通安全教育の在り方

4、有識者検討会において委員から出された主な意見

 本有識者検討会において、警察における自転車利用者に対する交通安全教育の現状や関係団体等からのヒアリング結果等を踏まえ、今後の交通安全教育の在り方について議論を行ったところ、各委員から次のような意見があった。

  • これからの交通安全教育においては、警察のほか、業界団体や民間事業者等、自転車に関わる全ての者が参画する協議会のようなものを立ち上げ、学校や地域社会を巻き込む形で交通安全教育の内容や質を検討し、深化させることができるような体制を設けることが必要である。
  • スケアード・ストレイト方式は、これまで広く取り入れられてきた手法ではあるが、交通安全教育の方法として懸念を感じている。学校教育の現場では命を大事にすることが前提であるにもかかわらず、スタントマンが車にひかれるところを見せるといった内容は問題があると感じており、近しい人を交通事故で亡くしている方は特に、そのような教育がフラッシュバックのきっかけにもなり得る。
  • 同一の対象に対する交通安全教育であっても、実施主体等によって内容が異なるところ、一定程度基準となるガイドラインのようなものを整備して教育を行うことができれば、異なる実施主体が交通安全教育を行ったとしても、その 内容について一定の水準を担保することができるのではないか。
  • 大人は、自転車の交通安全教育を受ける機会が少ないところ、学校において交通安全教育を行う際には、こどもの保護者も参加させるなど、こどもと保護者を同じ機会に教育することがよいのではないか。また、このような機会に地域住民も参加することができれば、大人が交通安全教育を受ける機会を増やすことができるのではないか。
  • 海外の学校では、上級生が下級生を教える仕組みがあり、日本でも一部でそのような仕組みが設けられているが、大人がこどもを教えるよりも年齢の近い者同士が教える方が浸透しやすく、また、教える側も自ら理解する必要があり、 知識の定着度も高くなるため、このような取組を広げていただきたい。
  • 自転車の交通安全教育は運転免許制度における講習とは異なり受講が義務付けられていないところ、当該教育を受けない者や当該教育に関心を持たない者に対し、どのようにアプローチしていくかという点は、引き続き検討していく必要がある。

スケアード・ストレイト方式:プロのスタントマンが交通事故を再現することで、交通事故の怖さを体感させ、交通ルール遵守の重要性について考えさせる交通安全教育技法のこと。

5、自転車利用者に対する今後の交通安全教育の方向性

〜ライフステージに応じた安全教育の充実化〜
 本有識者検討会において議論した結果、それぞれの内容について、次の方向性が取りまとめられた。

⑴ 交通安全教育の実施体制の強化

 近年、新型コロナウイルス感染症の影響による国民のライフスタイルや交通活動の変化に伴い、通勤・通学や配達を目的とする自転車利用のニーズが高まっているところ、従来のように、警察を主体とした交通安全教育のみにより、自転車の交通安全教育に対する社会的な需要・供給の流れを創出すること等は困難である。

 したがって、警察を中心に官民連携を強化し、交通安全教育の実施主体を警察以外の関係団体や民間事業者等へ拡大するとともに、実施主体が交通安全教育の需要を的確に捉え、個々のニーズに応じた適切な教育を行うことができるよう警察から働き掛けを行うことが適当である。

 具体的には、警察庁を中心として、関係省庁や地方公共団体のほか、自転車の販売事業者や振興団体、交通安全教育を実施している民間事業者等が参画する官民連携の拠点となる体制を構築するとともに、それぞれの知見等を取り入れた自転車の交通安 全教育に係るガイドラインを策定し、いかなる実施主体が行ったとしても一定 の教育の質を担保することができるようにするなど、交通安全教育の実施体制の強化を図ることが重要である。

 なお、これらの実施体制の強化は、交通反則通告制度の対象が自転車まで拡大され、当該制度が運用開始となるまでに行われることが望ましい。

⑵ 交通安全教育の内容及び方法

 これまで警察が行ってきた自転車の交通安全教育の内容について、例えば、スケアード・ストレイト方式による教育の効果を検証し、必要に応じて同方式による教育を見直すなど、どのような教育を行えば交通ルールを遵守してもらえるようになるかという問題意識の下、違反者が交通ルールを守らない原因も含めて科学的・実証的な観点から検証・分析を行い、抜本的な見直しを図ることが重要である。

 また、自転車は、幼児から高齢者まで幅広い年齢層に利用される最も身近な移動手段であるところ、その教育内容は、心身の発達状況や利用目的等のライフステージに応じたものであり、かつ、交通事故に遭わないようにするための知識や技能を身に付けることができるものとすべきであり、ガイドラインの策定に当たっては、これらの点に留意する必要がある。

 さらに、教育方法については、一方的に交通ルールを教えるような講義形式のみではなく、受講者にディスカッションをさせるなどして自ら考える機会を取り入れるような工夫をすべきである。

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6、警察において取り組むべき具体的な事項等

 上記5で示した今後の方向性を実現するため、警察において取り組むべき具体的な事項等については、次のような内容が考えられる(参考資料4)。

資料4(PDFへリンク)

⑴ 警察庁

  • 自転車の交通安全教育に係る官民連携の強化を図るため、官民連携の拠点となる体制を構築し、官民それぞれの知見等を取り入れながら、自転車の交通安全教育に係るガイドラインを策定する。
  • 民間事業者が行っている自転車の交通安全教育の内容を都道府県警察が認定するような制度を構築し、交通安全教育の実施主体を拡大できるようにする。
  • これまで警察が行ってきた自転車の交通安全教育の内容を検証し、学術的な観点等に基づき、その内容を充実・深化させる。

⑵ 都道府県警察

  • 官民連携の拠点となる体制及び交通安全教育の認定に係る制度の構築のほか、それぞれの管轄区域内における自転車の交通安全教育の実態を把握し、実働部隊として、地域における自転車の交通安全教育の担い手を拡充する。
  • 交通ルールの遵守の重要性が「他人事」ではなく「自分事」として捉えられるよう、民間事業者等が交通安全教育を行う際に有用かつ具体的な情報の積極的な発信に努める。
  • 以上の取組を通じて、自転車の交通安全教育の供給側と需要側のマッチングを促進する機能を果たす。

7、その他

 本有識者検討会においては、自転車に係る交通安全教育にとどまらず、自転車に関する正しい知識を広く一般国民に普及させていくことの必要性に関して、

 自転車のような外観を有する原動機付自転車等がインターネット上で販売されるなどして普及しているが、原動機付自転車等に該当する車両を「自転車」として通行させている者が増えている状況を放置してはならない。という意見が出された。

 自転車を含めた様々なモビリティが通行空間を共有する現状において、それらが共存し、安全で快適な道路交通環境を実現するためには、警察が中心となって何らかの措置を講ずることが求められる。

 その一例として考えられるのは、上記のような紛らわしい外観を有する車両を利用者が誤解した状態で利用することに起因する無用な事故やルールの無視を未然に防ぐための対策であり、当該車両が自転車ではなく原動機付自転車等に該当することを国民に対して明確に示し、その認識が広く共有されるような施策を打ち出していくことが必要である。

 

◎ 出典

  • 警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html)
  • 「良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書」(警察庁)(https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf)を加工して作成。

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