交通誘導警備業務2級検定項目
(令和版)
第2章 法令に関すること
第1節 法その他警備業務の実施の適正を確保するため必要な法令に関する専門的な知識
2 憲法
人権についての概略的知識
警備業務を適正に実施するため、他人の権利や自由を侵害することのないよう基本的人権を正しく理解すること。
憲法は、個人の尊重を第一義としていますが、その精神は、すべての個人を尊重することであって、一個人のみを尊重するということではありません。憲法とは国家権力に歯止めをかけて、国民の人権を守るため、国を縛るための法であり、国や自治体が法律や条例を作るに当たって、そのルールが適正かどうかを憲法に定めています。
⑴ 基本的人権について
憲法 第三章 国民の権利及び義務
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
「基本的人権」とは
- 抽象的には人間が生まれながらにして持っていると考えられる権利。
- 人間が人間として生活していくうえにおいて、当然認められるべき基本的権利のことをいう。
- 平等権、自由権、社会権がある。
「享有」とは
- 生まれながらにして持っている、ということ。
「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」とは
- 基本的人権は、人種・性別・身分等の区別に関係なく、人間であれば当然に生まれながらにして持っている権利。(人権の普遍性)
「侵すことのできない永久の権利」とは
- 人権が公権力によって侵害されるものではない。(人権の不可侵性)
「現在及び将来の国民に与へられる」とは
- 基本的人権が、今現在国民である者にも、将来国民となる者にも与えられる。(人権の固有性)
◯ 固有普遍性と永久不可侵性
憲法第11条は、基本的人権の保障を一般的に宣言するとともに、固有普遍性と永久不可侵性という性格を明らかにしている。
「固有普遍性」とは
- 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。(憲法条文)
- 基本的人権は、人間として当然の天賦生来の権利であって、誰でも等しく享有する普遍的なものであるという意味。
「永久不可侵性」とは
- 基本的人権は、侵すことのできない永久の権利。(憲法条文)
- 基本的人権は、現在の国民ばかりでなく、将来の国民も等しく享有するもので、将来永久に侵されることがないという意味。
◯ 個人の尊重と公共の福祉
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
憲法第13条は、個人尊重主義を採用し、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利が、立法その他の国政のうえにおいて最大の尊重を受けるという基本方針を明らかにしている。
☆基本的人権が絶対無制限ではなく、「公共の福祉に反しない限り」という制約(客観的限界)があることを明らかにしている。
☆公共の福祉による制約の程度は、それぞれの自由及び権利の性格によって異なる。
・思想、良心の自由は「公共の福祉」の制限を受けない。
「公共の福祉」とは
人の生活は本質的に社会の中の生活です、個人だけの利益を貫けば社会全体の生活が成り立たなくなり、社会の利益だけを考えると、個人の利益が踏みにじられてしまう場合があります。
このように個人の利益と社会の利益が衝突する場合に、両者の歩み寄りが必要になります。
また、憲法によって人権は保障されていますが、その人権は必ずどこかで他の人権と衝突します、喫煙権対嫌煙権のように。
他人に迷惑をかけることは許されませんし、いくら「表現の自由」が保障されているといっても、他人の名誉やプライバシーを侵害してまで表現する自由が無制限に認められているわけではないのです。どのような人権であっても、他人に迷惑をかけない限りにおいて認められるという制限を持っています。
人権は必ず他人の人権と衝突するもの、なので、人権とは一定の制約を受けざるを得ない。だから、ルールを設けてみんなの人権を少しだけ制約して妥協してもらう。制約して妥協してもらう。妥協して制約を受け入れる。
お互いが歩み寄ってお互いの人権侵害が最小限になるように妥協する。
「公共の福祉」とは、この「妥協」です。すべての人の人権がバランスよく保障されるように、人権と人権の衝突を調整すること、ルール作りをするための指針のようなものと考えられます。
「公共の福祉による制約(制限)」とは具体的には、法律や条例です。
関連問題
コメント