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未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル「警備業編」1、労働災害

警備員指導教育責任者2号業務

厚生労働省は、経験年数の少ない未熟練労働者が、作業に慣れておらず、危険に対する感受性も低いため、労働者全体に比べ労働災害発生率が高い状況を鑑み、特に製造業、陸上貨物運送事業、商業の中小規模事業場における雇入れ時や作業内容変更時等の安全衛生教育に役立つよう、安全衛生教育マニュアルを作成しています。

厚生労働省が作成した「警備業向け未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル」を紹介します。
掲載場所は、厚生労働省ホームページ内の未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアルページ警備業務むけにあります。
資料には、PDF形式とパワーポイント形式があります。

その中からいくつかを紹介します。

第1章 未熟練労働者に対する安全衛生教育
(安全衛生担当者用)令和2年3月

第Ⅰ.未熟練労働者に対する安全衛生教育の必要性

1. 警備業の労働災害

(1) 警備業の労働災害は増加傾向が続いている

<警備業の労働災害の特徴>
・休業4日以上の労働災害は、ここ5年で見ると増加傾向である。
・死亡災害については、年間10数名の件数で推移している。
・平成30年度の被災警備員数は、1669名に上るが、事故の型別で見ると、「転倒」と「交通事故」が多く、過半数を占めている。また「熱中症」は、H29年度の69人と比較して急増している。
・平成30年度の被災警備員において、死亡者16名のうち8名は「交通事故」が原因である。

(2) 勤続年数3年未満の未熟練労働者は労働災害に遭いやすい

<勤続年数ごとの労働災害>
・勤続年数3年未満の未熟練労働者の労働災害が最も多く、被災警備員数1669名の約3分の1を占めている。
・勤続年数が10年以上の警備員についても、労働災害が多く報告されている。
・被災警備員の年齢構成は、雇用実態と同じ傾向を示しており、60~69歳の警備員の労働災害が最も多い。
・未熟練かつ高齢の警備員は、労働災害に遭う可能性が高いことが示唆される。

(3) 「1号業務」と「2号業務」での労働災害が多い

<業務・業務内容ごとの労働災害>
・「2号業務」での労働災害が最も多く、「1号業務」と併せて全体の77%を占めている。
・「車両誘導中」での労働災害が最も多く、次いで「移動中」、「巡回中」が多くなっており、この3業務だけで過半数を占めている。

(4) 「1号業務」では、「巡回中」の「転倒」が最も多い

<業務内容と事故の型>
・「1号業務」では、「巡回中」の「転倒」が最も多く、次いで「移動中」の「転倒」、「保安警備中」の「プロパー事故」が多い。
・「2号業務」では、「車両誘導中」の「熱中症」が最も多く、次いで「車両誘導中の」の「転倒」、「車両誘導中」の「交通事故」が多い。
・「3号業務」では、「現送車運行中」の「交通事故」が最も多く、次いで「現金・貴重品等運搬中」の「転倒」、「積卸し作業中」の「はさまれ」が多い。
・「機械警備業務」では、「移動中」の「交通事故」が最も多く、次いで「緊急対処中」の「プロパー事故」、「移動中」の「転倒」が多い。

(5) 「交通事故」は死亡災害につながるおそれが高い

<事故の型と程度>
・被災警備員の多い「交通事故」、「転倒」、「熱中症」、「無理な姿勢・動作の反動」のうち「交通事故」は最も死亡の割合が高く、死亡災害につながるおそれが高い。
・「転倒」は、「8日以上の休業」が半数以上を占めており、重傷を負うおそれが高い。
・「無理な姿勢・動作の反動」についても、「8日以上の休業」が半数近くを占めており、重傷を負うおそれが高い。
・「熱中症」により死亡が確認された事例も報告されている。

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2. 安全衛生教育で労働災害を防ぐ

(1) 未熟練労働者への安全衛生教育を充実させましょう

ア. 未熟練労働者への安全衛生教育は特に重要
安全衛生教育はなぜ必要なのでしょうか。
職場には、様々な危険が潜んでおり、その危険を認識していないことに起因する労働災害が未だに多数発生しています。
そのような労働災害を防止するためには、次のことが必要です。
(ア) 設備や装備などの、モノの面で「不安全な状態」にならないようにすること。
(イ) 気温や労働時間などの、管理・環境の面で「不安全な状況」とならないようにすること。
(ウ) ルール違反やコミュニケーション不足などの、ヒトの面で「不安全な行動」とならないようにすること。

特に未熟練労働者の場合は、職場での作業に十分に慣れていないため、不安全な行をしても不安全な状態とならないよう、
(ア)の設備や装備などの面からの安全対策に加え、
(イ)の高温環境下など過酷な労働環境にならないよう管理監督者は留意する必要があります。

さらに未熟練労働者は、危険への認識が薄く、安全な作業方法も十分には身についていないため、
(ウ)の不安全な行をなくすということも大変重要です。

上記の「不安全な状態」、「不安全な状況」、「不安全な行動」に労働者自身が気付き、避けるためにも、「安全衛生教育」は重要です。
(労働安全衛生法でも雇入れ時や作業内容変更時の安全衛生教育を事業者に義務付けています。)

未熟練労働者は、職場に潜んでいる危険に「気付かない」、または「危険と感じていない」場合が多いと言われており、
知らず知らずのうちに「不安全な状態」、「不安全な状況」、「不安全な行」に陥ってしまうおそれがあります。
そのような危険に気付き、回避するとともに安全な作業について理解し、身につけるために安全衛生教育を行う必要があります。

イ. 安全衛生教育の内容
未熟練労働者に対する安全衛生教育では何を教育したらよいのでしょうか。
労働安全衛生規則第35条では下記の8項目が示されています。

(参 考)
【労働安全衛生規則第35条】
(ア) 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
(イ) 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
(ウ) 作業手順に関すること。
(エ) 作業開始時の点検に関すること。
(オ) 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
(カ) 整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
(キ) 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
(ク) 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項。

未熟練労働者に対し、雇入れ時や雇入れ後に効果的な教育を実施するための具体的な項目は次のとおりです。
これらの項目を参考に安全衛生教育を実施しましょう。
(各項目の詳細は、「第Ⅱ 未熟練労働者に対する安全衛生教育の流れ」を参照してください。)

**未熟練労働者に対する安全衛生教育の流れ(教育時間の目安:1時間程度)**

1 職場には様々な危険があることを理解させる。

2 「かもしれない」で危険の意識をもたせる。

3 労働災害防止の基本を教える。(基本的なポイント)
【安全衛生のルールや活の意義を理解させる】
 (1)安全な作業は正しい服装と姿勢、報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)から
 (2)警備指令書の確認と順守
 (3)危険予知訓練(KYT)の実践
 (4)ヒヤリ・ハットの活用
 (5)4S・5Sの励行
 (6)リスクアセスメントの実施

4 労働災害防止の基本を教える。(事故の型ごとのポイント)
【安全な作業をみんなで実施し職場を安全に】
 (1)「転倒」災害防止のポイント
 (2)「交通事故」災害防止のポイント
 (3)「腰痛症(無理な姿勢・動作の反動)」災害防止のポイント
 (4)「熱中症」災害防止のポイント
 (5)「墜落・転落」災害防止のポイント
 (6)「はさまれ」災害防止のポイント
 (7)「プロパー事故」防止のポイント

5 労働災害防止の基本を教える。(緊急時のポイント)
【異常事態や労働災害が発生したときの対応を身につける】
 (1)異常事態発生時の対応
 (2)労働災害発生時の対応

ウ. 業務区分と事故の型
発生しやすい労働災害の「事故の型」は、業務によって様々です。労働災害防止の基礎を教育する 際には、下記を参考に取捨選択して教育に役立ててください。

なお発生レベルは、「全国警備業協会平成30年度加盟員の労災事故の実態データ集」を参考に、
総被災警備員数に占める「事故の型」別被災警備員数の割合を、下記分類で表現したものです。
◎:20%以上、〇:5%以上 20%未満、△:5%未満

また、上記は「発生しやすい」事故の型を示しており、△であっても労働災害として発生するおそれはありますので十分ご注意ください。

出典
厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/index.html)
未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html)
警備業向け_安全衛生教育マニュアル(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/000611912.pdf)を加工して作成
令和3年1月10日現在

次は
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未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル

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